食料・農業・農村基本問題調査会答申について


食料・農業・農村基本問題調査会答申の概要

第1部 食料・農業・農村政策の基本的考え方

  1 食料・農業・農村を考える基本的な視点
  2 食料・農業・農村の抱える厳しい諸問題
  3 食料・農業・農村に対する国民のきたい
  4 食料・農業・農村政策の目標

第2部 具体的政策の方向

  1 総合食料安全保障政策の確立
  2 我が国の農業の発展的可能性の追求
  3 農業・農村の有する多面的機能の十分な発揮
  4 農業団体のあり方の見直し
  5 食料・農業・農村政策の行政手法



                                平成10年9月
                                農林水産省


  食料・農業・農村基本問題調査会においては、平成9年4月、内閣総理大臣の
諮問を受け新たな基本法の制定を含む農政全般の改革について検討を行ってき
た。調査会においては、地方公聴会等により国民の意見を聴取しながら、具体的
な政策の方向について検討を進めてきた。
  平成10年9月17日、同調査会は、諮問事項についての調査会としての考え方
を答申として決定した。


1 内閣総理大臣の諮問(平成9年4月18日)

 「食料、農業及び農村に係る基本的な政策に関し、必要な改革を図るための方策
に関す
る基本的事項について、貴調査会の意見を求める」


2 調査会の構成

     会長 木村尚三郎東京大学名誉教授
     委員20名、専門委員15名


3 検討の経緯

  調査会:平成9年4月18日以降 11回
  部  会:平成9年6月27日以降 34回
        (食料部会・農業部会・農村部会・合同部会)
  地方公聴会:8ヵ所

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食料・農業・農村基本問題調査会答申の概要


はじめに

第1部 食料・農業・農村政策の基本的考え方

1 食料・農業・農村を考える基本的な視点

 (1)食料供給の安定は、国民生活の基盤である。
 (2)農地と森林は、水をはぐくみ国土をつくる。
 (3)21世紀には、持続的な社会の形成が求められる。
 (4)21世紀の世界の展望
   @人口・食料・環境・エネルギー問題が顕著化する。
   Aボーダーレス化が進展する。
 (5)21世紀の我が国経済社会の展望
   @人口は、増加から緩やかな減少局面になる。少子高齢化が進行する。
   A経済成長は、より緩やかになる。情報化・技術開発が進展する。
   B価値観は、心の豊かさ、ゆとりといった価値への評価が高まる。
   C国際化が更に進展する。


2 食料・農業・農村の抱える厳しい諸問題

 (1)食料需給構造のギャップが拡大し、食料自給率が低下している。
 (2)農地の利用状況が悪化するとともに、農業の担い手が弱体化している。
 (3)農村の活力が低下し、国土・環境保全等の多面的機能の低下の懸念がある。

3 食料・農業・農村に対する国民の期待

 (1)将来にわたり食料の安定供給を確保すること。
 (2)安全・良質で多種多様な食料の供給と食品産業の健全な発展を図ること。
 (3)我が国農業の体質を強化し、食料を合理的価格で供給すること。
 (4)農業が内在的に有する自然循環機能を十分に発揮させること。
 (5)農業・農村が有する多面的機能を適切に維持・発揮させること。
 (6)農村地域社会を維持・活性化すること。
 (7)食料・農業分野における主体的・積極的な国際貢献を行うこと。

 

4 食料・農業・農村政策の目標

 @食料の安定的な供給を確保するとともに、我が国農業の食料供給力を強化すること。
 A農業・農村の有する多面的機能の十分な発揮を図ること。
 Bこれらの目標を達成する上で、地域農業の発展可能性を多様な施策や努力によって
 追求・現実化し、総体として我が国農業の力を最大限に発揮すること。

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第2部 具体的政策の方向

1 総合食料安全保障政策の確立

(1)世界の食料需給の動向把握と見通しの検証

   今後の世界の食料需給は、短期的には価格変動の不安定さが増すとともに、
  中長期的にはひっ迫する可能性がある。世界の食料需給について、動向の把握
 や見通しの検証を的確に行う必要がある。

(2)国内農業生産を基本とする食料の安定供給

   限られた国土資源の下で国民の必要とする食料を確保していくためには、国内
  農業生産と輸入・備蓄を適切に組み合わせることが不可欠であるが、食料の輸入
 依存度を高めることは我が国の食料供給構造を脆弱にすること等から、農業構造
 の変革等による生産性の向上を図ることを前提に、国内農業生産を基本に位置づ
 けて、可能な限りその維持・拡大を図るべきである。

(3)食料自給率の位置付け

   食料自給率は、国内で生産される食料が国内消費をどの程度充足しているかを
  示す指標である。
   食料自給率の維持向上を図るためには、国内生産面では、@農地・担い手等の
 確保、A生産性の向上による合理的価格での食料供給、B消費者等のニーズに対
  応した供給、 Cコスト低減、品質の向上等を通じた麦・大豆等の生産拡大が必要で
  ある。また、国内消費面では、 食生活のあり方につき国民の理解を深め、 望ましい
  食生活が実現するようにしていくことが重要である。
   このように食料自給率は、農業者、食品産業、 消費者等関係者のそれぞれが問
  題意識を持って具体的な課題に主体的・積極的に取り組むことの成果として、 維持
  向上が図られる性質のものである。
   こうした点について国民全体の理解を得た上で、国民参加型の生産・消費の指針
  としての食料自給率の目標が掲げられるならば、食料政策の方向や内容を明示する
  ものとして、意義がる。    

(4)不測時に対応する食料供給力の確保

   農地、水、担い手等の確保、技術水準の向上等を通じて食料供給力の確保を図
  るとともに、不測時における食料の危機管理体制を検討すべきである。

(5)食生活のあり方と的確な情報提供

   消費者等の商品選択に資するよう、表示・規格等により適切な情報提供を行うとと
  もに、食生活のあり方を見つめ直す国民運動を展開すべきである。

(6)食料の安全性の確保・品質の向上

    食料の生産、加工・製造、流通の各段階で安全性の確保や品質の向上に向けた
  対応を強化する必要がある。

(7)多種多様な食料生産・加工流通の促進

    地域によって異なる生産条件・立地条件を活かしながら、多種多様な生産及び加
 工・流通を展開し、農産物の付加価値を高めていくことが必要である。

(8)食品産業の健全な発展

   食品産業について、農業と一体となって国民のニーズに即した食料の安定供給の
  役割を果たすよう、一層の体質強化を図る必要がある。

(9)食料・農業分野における主体的・積極的な国際貢献

   食料・農業分野の国際協力の重要性を明確に位置付けるとともに、技術協力・資金
 協力を拡充すべきである。


2 我が国農業の発展可能性の追求

(1)次世代に向けた農業構造の変革

  ア 昭和一桁世代のリタイアを契機に、農業構造の変革を進めるため、意欲ある担い
   手に施策を集中し、生産性の高い優れた経営の確立を目指すべきである。
    また、地域農業の中心的な担い手となる人に対する農地の利用集積を促進してい
   くことが必要である。
  イ 優良農地を確保するため、必要な農地確保の方針を明示するとともに、農地が公
   共性の高い財であるとの認識を徹底し、 農地の有効利用のため適切な利用規制を
   行うべきである。
 

(2)意欲ある多様な担い手の確保・育成と農業経営の発展

  ア 農業経営の法人化の推進
  ・ 経営の質的向上を図る手段として、農業経営の法人化を一層推進することが必要
   である。
  ・ 土地利用型農業の経営形態としての株式会社については、@機動的・効率的な事業
   運営、A農村の雇用の場の提供といった利点がある一方で、(1)農地の投機的取得、
   (2)集団的な水管理・土地利用を乱すといった懸念があり、株式会社一般に参入を認
   めることには合意は得難い。
     しかし、(ア)畜産や施設園芸部門において現に農業経営を行う株式会社が経営の
   発展のため農地を取得する場合、 (イ)農作業の受託を行う第3セクターの株式会社
   が農地を取得して農業を行う場合等も一切認めないとすることは、担い手の経営形態
   に関する選択肢を狭めることとなり、問題がある。
     このため、投機的な農地取得や地域社会のつながりを乱す懸念が少ない農業生産
   法人の一形態としてであって、 かつ、 これらの懸念を払拭するに足る実効性のある措
   置を講じることができるのであれば、株式会社が土地利用型農業の経営形態の一つと
   なる途を開くこととすることが考えられる。
  イ 地域の実情に即し、サービス事業体、集落営農、第3セクター等の多様な担い手を確
   保・育成していくべきである。
  ウ 新規就農を促進するため、人材を確保・育成する施策を集中的に行うべきである。ま
   た農業に関する教育活動を充実することが重要である。
  エ 農業生産や地域の活性化に大きく貢献している女性の役割を正当に評価するととも
   に、その能力を十分に発揮できるようにしていく必要がある。
  オ 高齢農業者の有する技術や能力が活かされるよう、地域の実情に応じて役割を明確
   化するとともに、高齢農家の福祉の向上を図る必要がある。
    農業者年金制度について、財政状況も踏まえ、その果たしてきた役割や機能を検証し
   つつ、制度のあり方を見直すべきである。


(3)市場原理の活用と農業経営の安定

  ア 自由な経営展開を促進し、生産性の高い農業を営む経営感覚に優れた担い手を育成
   するため、価格が需要の動向や品質に対する市場の評価を適切に反映するよう、 農産
   物の価格政策に市場原理を一層活用すべきである。
  イ この場合、価格変動により意欲ある担い手が大きな打撃を受けることがないよう、価格
   政策の見直しに応じ、市場原理活用の趣旨に反しないように留意つつ、価格低落時の経
   営への影響を緩和するための所得確保対策を講じていくべきである。 また、 個々の品目
   ごとではなく農業経営単位での所得を確保するための対策について、 価格政策の見直し
   状況等を踏まえつつ検討していくべきである。
  ウ 農業災害補償制度について、意欲ある担い手の育成と農業経営の安定を図る観点から
   見直しを図るべきである
  エ 米の生産調整について、農業者の経営の選択として実施する方向を追求するとともに、
   生産性の高い水田営農の定着を図ることが必要である。
  オ 資材費の削減等の努力とともに、農業の生産性の向上により、内外価格差の縮小を図
   り、国内農産物の販路を確保・拡大する必要がある。


(4)農業の自然循環機能の発揮

  ア 農業の自然循環機能を発揮させるため、農法がより環境と調和した持続的なものに
   なるよう、土づくりを基本として、化学肥料や農薬の使用量の低減等を併せて行う農法
   への転換を進めることが必要である。
  イ 農薬、化学肥料、家畜ふん尿等による環境に対する負荷を低減するとともに、有機性
   廃棄物の資源化と循環利用を推進していく必要がある。
   

(5)生産基盤の整備

  ア 農業生産基盤整備について、地域の立地条件に即した事業展開を図るとともに、環
   境の全等に配慮していくことが必要である。
  イ 土地改良制度について、情勢変化を踏まえ総合的に見直しを行うべきである。

(6)技術の開発・普及

  ア 技術開発について、食料の安定供給、生産性の向上、品質・安全性等国民の期待と
   政策の展開方向に即したものに重点を置く必要がある。
  イ 農業改良普及事業について、事業のねらい・対象分野を重点化すべきである。


3 農業・農村の有する多面的機能の十分な発揮

(1)農業・農村の有する多面的機能の重視

   農業・農村の有する国土・環境保全、緑・景観の提供等の多面的機能が十分に発揮さ
  れるよう、食料・農業・農村政策の各施策を実施することが必要である。 (これからの機
  能の役割について計量評価した場合、算出の根拠・条件により値は変わり得るが、代替
  法による評価の一例として、年間6兆9千億円に相当する価値があるとの試算がある。こ
  のうち中山間地域は約3兆円と全体の4割強を占める。)

(2)美しく住みよい農村空間の創造のための総合的整備

  ア 農村地域における計画的な土地利用と施設整備が行われるよう土地利用に関する
   制度を見直すとともに、必要な農地確保の方針を明示し、農地の有効利用や保全のた
   めの施策を拡充すべきである。
  イ 土地利用に関する計画手法と生産・生活面での基盤整備の事業手法とを組み合わせ
   農村の総合的な整備を行うことが必要である。

(3)中山間地域への公的支援

   ア 中山間地域等の多彩な立地条件・地域資源を活用し、多様な農業生産を推進すると
    ともに加工 販売と等と結びついた複合的・多角的経営を展開することが必要である。
    また、就業機会の増大を図るため、地場産業の振興を図ることが必要である。
   イ 中山間地域等への直接支払い
     中山間地域等での多様な食料生産と多面的機能の低減の防止に資するよう、担い手
   農家等の継続的で適切な農業生産活動等に対して直接支払いを行う政策は、 真に政
   策支援が必要な主体に焦点を当てた運用がなされ、施策の透明性が確保されるならば
   その点でメリットがあり、新たな公的支援策として有効な手法の一つである。
     直接支払いについては、既存施策との関係、費用対効果、地方公共団体の役割等に
   つき明確化する必要があり、国民の理解が得られる仕組みと運用のあり方、すなわち対
   象地域、対象者、対象行為、財源等の検討を行っていく必要がある。  
 

(4)都市住民のニーズへの対応

   ア 都市住民の多様なニーズに適切に対応するため、都市農業の役割を適切に評価し
    地域の実情に応じて必要な施策を講じるべきである。
   イ グリーン・ツーリズム等都市と農村の交流活動を推進すべきである。


4 農業団体のあり方の見直し

   各政策における各種農業団体の位置付け・役割を明確化するとともに、合併統合等によ
  る組織の簡素合理化や
事業運営の効率化に努めるべきである。


5 食料・農業・農村政策の行政手法

(1)行政手法のあり方

  @ 政策の効果について評価し、必要に応じ見直しを行う。
  A 財政措置について効率的・重点的に運用する。
  B 情報公開と国民の意見の反映により、政策立案の透明性を確保する。
  C 国と地方の役割分担を明確化する。
  D 国際規律との整合性に留意する。

(2)政策のプログラム化と定期的な見直し

   今後3〜5年計画で推進する政策をプログラム化し、5年程度ごとに全体の見直しを行うべ
 きである。

おわりに

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